冷やし中華はじめました

 

冷やし中華と言えば

夏休み中の昼ご飯に母親が作ってくれた定番を思い出す

特に嬉しくも残念でもなく

有り難みも感じずにひたすら食べた

思えば具材はいつも豊富で栄養面は考えられていた

 

要らないと言っていた昼ご飯が急遽欲しくなり

やっぱり要ると言えば

冷やし中華に限らず母親は直ぐに自分の分と一緒に作ってくれた

 

母親も世間も

一人前も二人前も作る手間は一緒と言うが

単純に材料と手間は倍であり

何より誰かに食べさせると思うと気がかりが倍どころではない

 

そんなことを思ったのが

一人暮らしが板についてきた今日この頃で

作ることの難しさと意味を知ったのだった

 

ある日

彼女が部屋に転がり込んだ

夏の昼は冷やし中華と決めていたボクは二人分を作ることにした

一人前と二人前じゃ違うと思いつつも

「一人前も二人前も同じことだ」

と作ってもらうことに遠慮していない彼女に言って

自分にも言い聞かせていた

母親の気持ち分かったような気がした

 

テレビもないこの部屋で

彼女が後ろで奏でる鼻歌をBGMにすれば

気分は高揚して

けれども

どこかで緊張しながら

冷やし中華を作った

 

完成してから気付いた

彼女の分の箸がない

フォークで食べようとする彼女の手を止め

急いでコンビニで買ってこようとしたが

二組持っていたボクの箸を勝手に使い始めた

 

止めようとしたが止められなかった

 

冷やし中華には氷を三個入れること

後半はラー油をかけて食べること

そんなボクの冷やし中華のこだわりを

彼女は後者だけを気に入った

 

それから

彼女はうだる暑さの中

部屋を訪れるようになった

ボクは迷惑そうに扱いつつも

材料は常に二人前を用意し

具材も毎回変化があるように考えているのであった

新しい箸も用意していたが使われることはなかった

 

夏が終わると彼女は来なくなった

 

チャウコン

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コメント

  1. より:
    いい。凄くいい。死ぬほど続き期待!
  2. mちゃん より:
    チャウコンさんの文章はテンポが心地よくて読みやすいです
    どんなのでも読ませていただきます
  3. より:
    チャウコンロリコンあそこは大根
  4. tyaukon より:
    あさん

    続きはないです
    だから
    冷やし中華を始めるのです
  5. tyaukon より:
    mちゃん

    一文の中の抑揚が読者の心の音読と巧く合致すると、読んでて気持ち良くなれる気がします
    それは
    上手い下手ではなく相性だと思うので、嬉しい限りです
  6. tyaukon より:
    あさん

    よく知ってんじゃん